修士1年 安藤 誠

 島根県にある宍道湖で「湖岸対流の生成がシジミの生育に及ぼす影響」を研究します。宍道湖は日本有数のシジミの産地です。スーパーには「宍道湖産」と書かれたシジミがたくさん並んでいます。シジミが多く生息する湖岸の浅場では、毎日の日射と冷却により水温成層が見られます。水温成層の消長は深さによって異なるため、夜間には図に示すような鉛直循環が生じます。その結果、エサとなる植物プランクトンがシジミの生息域に輸送されている可能性があります。また湖岸植生域の堆積ヘドロ中で生成した貧酸素水が流れてくる可能性もあります。私はこの現象を現地観測と数値シミュレーションで明らかにする予定です。連携教授の井上徹教先生(国土交通省港湾航空研究所)と石川先生の共同指導で研究を進めます。5月に現地を視察し、8月に観測を開始する予定です。

 

修士1年 菊池 喬

 宮城県にある鳴子ダムで「濁水長期化現象」を研究します。鳴子ダムは鬼首カルデラに1958年に建設されたアーチダムで、宮城県東部への給水と江合川の洪水調節を目的としています。カルデラの裸地で降雨時に生産される微細土砂は貯水池で堆積せず排出されますが、貯水池内で生じる"時差"のために、出水が終わっても下流の河川水は濁ったままです。このため鮎の産卵に影響が生じます。また伊達正宗所縁の岩出山の観光事業への影響もあります。私は貯水池内の流動特性を現地観測と数値シミュレーションで調べ、"時差"の仕組みを明らかにするとともに、濁水滞留を制御するダム操作方法を研究します。石川先生のほかに准教授の中村恭志先生の指導もいただく予定です。現地観測は8月〜9月に行いますが、現象が起きるのは大雨の直後ですから、観測日は決まっていません。雨が降りそうになったら現地(ダムを管理する国土交通省事務所)と連絡をとって出かけることになります。

 

修士1年 安河内 美咲

 青森県にある小川原湖の「塩水流入量増加に伴う急激な富栄養化」について研究します。小川原湖の常時の水面標高は40cmであり、高潮位の時には写真に示す高瀬川を通して海水が浸入します。このため湖心部に濃い塩水層が形成されますが、淡水と塩水の密度差により塩水層は嫌気化し、リン、窒素、硫黄など各種のイオンが高濃度で溶解しています。
  近年の海面変動により小川原湖への塩水侵入量が増加し、この10年間で湖内塩分層が5mも上昇しました。その結果、塩水に含まれている物質が表層に出てくるようになり、急激な水質悪化と漁獲高減少が生じています。私は、太平洋〜高瀬川〜小川原湖という水系の塩分循環の仕組みを数値モデル化し、今後の水質悪化の予測と対策について研究する予定です。先輩達が収集した現地データがたくさんあるので現地観測の予定は今のところありませんが、できれば自分でも水質観測をしたいと考えています。

 

修士1年 余 丹

 私は大連海事大学の英語科卒業で、日本で日本語を勉強した後、東工大の国際コースに入学しました。私の研究テーマは「環境科学における国際コミュニケーション手法」です。「国際コミュニケーション=英語」と考える人が多いと思います。しかし手話で示されるようにジェスチャーや表情も有効なコミュニケーション手段です。理系の場合には、数式、グラフ、フローチャートなどを上手く利用するとコミュニケーションが容易になります。というか、それらの多くは理系における「万国共通言語」と考えることができます。私に日本語を教えてくれた先生が「理系コミュニケーション」に関する石川先生の講演を聴き、私に東工大受験を薦めてくださいました。そこで私は環境情報を如何にして「理系万国共通言語」に翻訳し、環境科学の国際コミュニケーションに活用するかを研究します。

 

学部4年 小林 裕貴

 北アフリカのチュニジア共和国にあるJoumine貯水池において「微細土砂の流動・堆積過程と排砂方法」について研究します。チュニジアはローマと地中海の覇権を争ったカルタゴのあった所です。半乾燥地帯であるため水資源確保が重要課題で、貯水池がたくさん造られています。しかし半乾燥流域から流れ出る多量の微細土砂(粒径5ミクロン)の堆積により貯水容量が年々減少しています。本研究では貯水池内の土砂移動と排砂方法について研究します。大学院を昨年修了した先輩の研究によれば、微細土砂の浮上によって発生する濁水重力プルームが現象の鍵となっているとのことで、今年は現地に計測器を設置して観測するとともに、三次元流動数値シミュレーションモデルを組み立てる予定です。8月に現地調査に行きます。チュニジアはアラビア語とフランス語だそうで、空港とホテル以外では英語は通じにくいそうですが、度胸とボディランゲジで何とかなると先輩は言っていました。写真は、観測の合間にチュジア牛と戯れている先輩(去年)です。

 

学部4年 武藤 靖秀

 河川蛇行の発達過程に関する理論的研究をします。沖積河川の蛇行は自然のスペクタキュラな現象の一つです。日本では河川を堤防で固めてしまっていますが、大陸の平野を流れる河川の災害や環境変化を読み解いていく上で、蛇行現象の理解が不可欠です。本研究室で博士課程を昨年修了した先輩が蛇行流路の流れに関する理論を組み立てました。私はその理論を発展させるとともに河岸浸食の過程を組み込んで、蛇行流路の発達過程をシミュレーションするモデルを作成する予定です。理論的研究なので適用フィールドは特にありませんが、衛星画像などに見られる大陸大河の蛇行流路と数値シミュレーションの結果を比較してみたいと思っています。