新北上川および追波湾における
塩水流動と懸濁物質輸送に関する研究



追波湾

研究の背景と目的

 河川水には微細な懸濁物質が含まれています。さらに、その懸濁物質には有機物や栄養塩類などが付着しています。
 平常時の河川では塩水は河川まで遡上します。(図−1(a))このとき、河川を流れてきた懸濁物質は海水と接して凝集しヘドロとして河床に堆積していきます。ヘドロとして堆積した有機物や栄養塩類は、生物にとって良いエサともなりますが、その量があまりに多すぎると、水質や底質の悪化、底層水の貧酸素化などを生じ、底生生物に悪影響を及ぼします。
 一方、出水時には河道内にいったん堆積して浮泥となった懸濁物質が巻き上げられて海に流出し、内湾の生態系に影響を与えます (図−1(b))。特に、追波湾ではカキやワカメの養殖が盛んです。出水時の淡水の流出はこれらの水産業に大きな打撃を与えます。
 本研究では、宮城県にある北上川と追波湾をフィールドとして、一連の河川感潮域から海域まで懸濁物質の輸送過程を研究していきます。



研究手法 

本研究の全体的なイメージは右図のようになります。観測は大きく新北上川河道内と追波湾内の二つに分けられます。
 新北上川河道内では塩水楔の挙動と嫌気化、底泥堆積の周年サイクルなどの現地観測とシミュレーションを行います。塩水流動と懸濁物質挙動を再現するモデルを構築し、堰からの放流条件などを変えてシミュレーションを行い、最適な堰の操作法の検討などを行います。
 また、追波湾では衛星画像解析を使って湾内での濁水の挙動を把握します。濁質を含んで比重が重くなってるとはいえ、海水に比べれば河川からの水は軽く、湾内に流れ込んだ濁水は海表面を流れていきます。したがって、衛星画像を画像解析することでその姿が面的に捕らえれられるというわけです。衛星画像をもとにして捕らえた濁水の広がりを検証データとして、湾内の濁水流動モデルを構築し、湾内の水産業に対する影響などを評価します。特にここでは、ワカメ養殖に大きな影響を与えると考えられえる塩分濃度の分布に注目します。



現地観測
 
衛星画像から濁水挙動の情報を得るためには現地観測が欠かせません。
現地観測で出水時の海面の塩分・水温・濁度の分布を計測します。

ブイです このように目印を作り、時には塩分計などをぶら下げます。流されると怒られます ブイなどの目印とGPSにしたがって船頭さんに操船してもらい、船底につけた塩分水温計と濁度計で広域計測をします。 海上は川に比べると結構ゆれるので船酔いします。遠くを見ましょう


観測結果として、船が走った軌跡上の水質データを得ます。これで水質分布のだいたいの傾向は捉えられます。



衛星画像
 現地観測で得られるデータは船の軌跡上だけです。そこで、衛星画像を利用して塩分濃度の面的な分布を推測します。



どうやって処理していくか   輝度⇒濁度⇒塩分

まず、衛星画像から船の軌跡上の輝度データを抽出します。輝度と表層の濁度の間に高い相関があることは想像できます。
 抽出した輝度データと濁度の相関を取り、画像の輝度値と濁度の関係式を作ります。その関係式をもとに画像上の輝度データを濁度の値に変換して濁度の分布を得ます。
 一方、塩分濃度は直接衛星画像に反映されているとは考えられません。
 そこで、現地観測の結果から、表層の塩分濃度と濁度の関係式を作ります


二つの関係式を使って輝度データから塩分濃度分布が予測できます。